
今回は、「学ぶ(=研修)」から、教職員の義務について考えます。
働きながら「学ぶ」ことの難しさと、優遇されている教員の立ち位置
「日々の仕事が忙しくて、自分の勉強をする時間なんてとても取れない」——。
これは、多くの社会人が抱く共通の悩みではないでしょうか。
スキルアップのためには、業務時間外の貴重なプライベートの時間を削らざるを得ないのが現実です。
しかし、「公立学校の教員」という職業には、他の業種とは一線を画す驚くべきルールがあるのです。
教員にとって「学ぶこと(研修)」は、単なる個人の努力目標ではなく、法律によって保障され、かつ義務付けられた「職務そのもの」です。

教育公務員特例法21条「絶えず研究と修養に励まなければならない」という法令がありますね。
教員の研修に関して言うと、勤務時間内でも研修を受けることが可能、であることが記されている法令があります。
勤務時間内に研修を受けられる優遇が認められている、さて、そこまでして学ぶことが求められているのはなぜでしょう。
それは、教員という職業が持つ「特殊性」にあります。
教職の究極のゴールは、子供たちの「人格の完成」にある
教員が学び続けなければならない最大の理由は、「教育という仕事」の究極の目的を達成するために必要だからです。
その究極の目的は、「教育基本法」の第1条に明確に記されています。
教育基本法 1条(教育の目的) 「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家および社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
この「人格の完成」を支える教員の役割は、単に教科書の知識を伝達するだけの作業ではありません。
教職とは、ひとの生き方や人格形成に影響を与えることが公的に認められた極めて責任の重い職業なのです。
人の成長に携わる者が、自ら学ぶことを止めてしまえば、その瞬間に教育の質は停滞し、子供たちの成長の可能性を狭めてしまいかねません。
子供たちの未来を預かるプロフェッショナルとして、常に最新の知見や豊かな教養を吸収し続けることは、法律で義務付けられる以前に、教員という職に就く者にとって避けては通れない「宿命」であり、社会からの厚い信頼に対する誠実さの証なのです。

教育者としての使命を達成させること、教師の存在意義はとても大きいのです。
「一般の公務員」とは違う? 教員を支える法律の階層構造
公立学校の教員は「地方公務員」ですが、同時に「教育公務員」という特別な位置づけにあります。
そのため、一般の公務員に適用される「地方公務員法」だけでなく、教員だけの特例を定めた「教育公務員特例法(教特法)」が優先的に適用されます。
ここで、法律の優先順位(形式的効力の原理)を整理してみましょう。
憲法(最高法規)
・L 法律(国が制定)
・・L 政令・省令(内閣や各省庁が制定)
・・・・L 条例(地方自治体が制定)
法令には、「形式的効力の原理」「後法優先の原理」「特別法優先の原理」という原理が存在しています。
簡単に言えば、上位の法令が優先され、後から出てきた法令が優先され、特別法は一般法よりも優先される、というものです。
例えば…
地方公務員法24条5項「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」
という法令があります。
この法令によれば、あなたの勤務時間「何時から何時までか」は、所属する自治体の条例によって決まります。
しかし、その勤務時間の中で「どのように学ぶ権利があるか」については、国の法律である教特法が条例に優先して適用されるのです。

この階層構造によって、自治体の枠を超えて全国的に保障されるのですね。
驚きのルール:授業がなければ「学校外」での研修もOK
教員の研修がどれほど重要なものとして位置づけられているかは、教育公務員特例法第22条に鮮明に表れています。
教育公務員特例法 22条 「教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。」
同条 2項 「教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修をおこなうことができる。」
まず第1項で、研修が「与えられるべき権利」であることが宣言されています。
そして第2項では、授業がない時間帯であれば、校長の承認を得ることで「勤務場所(学校)を離れて」研修を行うことが認められています。
一般の公務員は、勤務時間中に(給料をもらいながら)「自分の勉強のために研修会へ行ってきます」と言うことは、通常認められません。
しかし教員の場合、学校外で広く知見を広めること自体が巡り巡って子供たちへの教育の質を高めることにつながっていきます。
特に、児童生徒が登校してこない長期休業中などは、自分の専門性を高める絶好のチャンスともいえます。
授業の質を高めたり、教職関係の専門性をより高めたり、職務の一部として学ぶことができるのです。
これは教職に対する特権であると同時に、それだけ高度な自律性と専門性が求められていることの裏返しでもあるのです。

授業のない日(=長期休業中など)は、自分の専門性を高めるような研修会などに参加可能ということですね。
「職務専念義務」を免除されるという、教育のプロとしての重み
ところで、地方公務員には、地方公務員法30条および35条に規定されている「職務専念義務」という厳しい鉄則があります(これは、超重要専門用語で、頻出項目の一つです)。
地方公務員法 35条(職務に専念する義務) 「職員は、法律又は条例に特別の定めがある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」
本来、働くということは、その勤務時間の1分1秒を割り振られた職務に捧げなければなりません。しかし、この条文にある「法律又は条例に特別の定めがある場合を除く外」という一文こそが、研修の「魔法の扉」となります。
教特法という「特別な法律」があるおかげで、教員は例外的にこの義務を免除されるのです。
そしてこの法令によって、勤務時間中でも研修を受けることができる研修のことを特に、職務専念義務を免除されて行う研修(=「職専免研修」)と呼ぶことがあります。
教員の研修は、大きく以下の3つのタイプに分類されます。
- 職務そのものとして行われる研修(法定研修など、命令によるもの)
- 職務専念義務を免除されて行う研修(校長の承認を得て、自主的な計画に基づくもの)
- 勤務時間外に自主的に行う研修
「職専免研修」は、研修を受けること自体が業務の遂行に不可欠であると見なされるため、給与が支払われる有給扱いのまま、本来の職務(校務)から離れることが許されます。
この法的免除は、あなたが「学びのプロ」として自らのキャリアを主体的に構築していくための強力な武器となりうるものの、その責任の大きさを十分に自覚する必要があります。
学び続けることは、教員としての権利であり最大の誠実さである
教員にとっての研修は、単なるスキルアップの手段ではありません。それは、教育基本法に掲げられた「人格の完成」という崇高な目的に向かうための、法律で守られた聖域です。
「給料をもらいながら学べる」という事実は、決して軽いものではありません。
これは、あなたが学び続けることは、子供たちの未来を拓くことにつながる、という社会からの「期待」と「投資」の現れなのです。
裏を返せば、これは、大変重責を担うことなのです。
ここが、一般の公務員の研修との違い、と言えるのです。
教育公務員には、子供たちの未来が託されている、と言っても過言ではありません。
そのために学び続ける―これは使命でもあり、義務でもあり、教員としての「当たり前」の一つと言えるでしょう。
これだけは覚えておこう
今回触れた法令は、どれも超一級の頻出項目です。空港でいうところのハブ空港のようなイメージです。
ここを起点にすると、いろいろな接点が見えてくるので、まずは今回出てきたキーワードや法令名をつなげて、しっかりと覚えておくようにしましょう。
・教育とは?・・・教育の目的=教育基本法1条
・公立学校の先生の研修の特例とは?・・・職専免研修=教育公務員特例法22条2
・地方公務員の勤務時間はどうなってる?・・・勤務条件=地方公務員法24条5
・地方公務員の義務とは?・・・服務の根本基準=地方公務員法30条
・地方公務員の具体的な義務の一つ・・・職務専念義務=地方公務員法35条
今回のまとめ
では、空欄に適語を埋めてみましょう。
(1) 教育基本法 1条
教育は、( )を目指し、( )および( )の形成者として必要な資質を備えた( )ともに健康な( )を期して行われなければならない。
(2) 教育公務員特例法22条2
教員は、( )に支障のない限り、( )の承認を受けて、( )を離れて研修をおこなうことができる。
(3) 地方公務員法30条
すべて職員は、( )として公共の( )のために勤務し、且つ、( )の遂行に当たっては、( )これに専念しなければならない。
(4) 地方公務員法35条
職員は、法律又は条令に特別の定めがある場合を除く外、その( )及び( )のすべてをその( )のために用い、当該自治体が( )を有する職務のみに従事しなければならない。
今回は以上です。
次回は、教員としての「義務」について浅く深掘りしていきます。
次回もお楽しみに!

