
公務員の服務について、特に「身分上の義務」と呼ばれているものを考えていくシリーズの2回目になります。
覚えておくべき公務員の服務、「身分上の義務」については、全部で5項目です。
- 信用失墜行為の禁止
- 秘密を守る義務
- 政治的行為の制限
- 争議行為等の禁止
- 兼職・兼業の制限
今回は、4.争議行為の禁止、5.兼職・兼業の制限について考えていきましょう。
教員採用試験に出る教育法規 ~身分上の義務④~ 争議行為等の禁止とは
一般の会社員は、例えば、「給料上げろ」などと訴える手段として、仲間と団結したり、ストライキを行ったりすることは法律で認められています。
これは、いわゆる労働三権と言って、日本国憲法28条で認められています。
労働者側が会社側と対等に交渉できる権利が憲法により保障されている、というわけですね。
さて、公務員の場合はどうでしょう。公務員も労働者ではありますが、たとえばストライキなんてできるでしょうか。
市役所に用事があったり、パスポート申請や受け取りなど、「今日はストライキやってるんで対応できません」なんてことは今まであったでしょうか…
地方公務員なら、地方公務員法30条の定めについて考える必要がありますね。
「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し…」です。
公務員は私企業と違い、勤務条件等は法令に基づくのですね。

では、公務員は黙って言うことを聞くしかないの?

そこがポイント!公務員にも実は認められている権利があるのです。ここでは、何が可能で何が禁止されているのかを整理していきしましょう。
地方公務員に認められている権利
まず、労働三権とは、①団結権 ②団体交渉権 ③団体行動権(争議権)ですね。
さて、このなかで、地方公務員にも認められているのは何番でしょう…
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正解は①です。
地方公務員法52条 この法律において「職員団体」とは、職員がその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体をいう。
地方公務員が勤務条件の維持改善を図ることを目的とした団体を結成することは法律によって認められているのですね。
第52条には、さらに5つの項が続くのですが、内容だけざっくり整理すると以下のことが定められています。
- 職員の加入は本人の意思が尊重されること(加入しても、しなくてもよい)
- 管理職とそれ以外の職員が同一の組織を作ることはできない
- 警察職員と消防職員は職員団体を結成・加入ができない

地方公務員に認められているのは「団結権」、つまり、職員団体を結成することは可能なのですね。
では、この職員団体ができることはどんなことでしょうか…?
地方公務員法55条 地方公共団体の当局は、登録を受けた職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉の申入れがあつた場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。
これを学校に当てはめてみるとどうなるでしょう。
「職員団体の当局」とは校長ということになります。
そうすると、以下のことが言えることになりますね。
『一般の先生方は、所属する職員団体を通して、勤務条件について校長と交渉することができる』
ただし大切なことは、学校でいう勤務条件とは、校長が権限を有する事項であって、何でもかんでも交渉できるわけではない、ということがポイントです。
「校長が権限を有する事項」とは、実は覚えておくべき項目となっていますので、また別の回で詳しく見ていきます。
地方公務員に認められていない権利
職員団体が当局に対して、勤務条件については交渉が行える、ことはわかりました。
では、何が禁止されているのでしょうか…?
一般の企業だと、労働者側が経営者側に対して、労働条件の交渉の手段としてストライキは認められていますが、公務員はそういうわけにはいきませんね。
公務員がストライキを起こせば、公共の利益は守られません。
職務専念義務というのもありますしね。
それ以外はどうでしょうか…?
ストライキの他には何が認められないのでしょう…。
地方公務員法37条 職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
この法令は、「~してはならない」ことについて書かれています。つまり、禁止事項ということになりますね。
この第37条をざっくりまとめてみると、
- 同盟罷業(いわゆるストライキですね)
- 怠業(業務をさぼったり、仕事の手抜きのこと)
- 争議行為
- 地方公共団体としての活動能力を低下させる行為
地方公務員には、これらが禁止されている、ということです。
これらは、まとめて「争議行為等の禁止」と呼ばれています。「等」がポイントですね。
「等」には何が含まれているのかは、覚えておく必要があります。
公務員には「争議行為等」は認められていない、
これは「身分上の義務」として、覚えておきましょう。
教員採用試験に出る教育法規 ~身分上の義務⑤~ 兼職・兼業の制限とは
公務員は副業禁止、というようなことを聞いたことはありますか?
一般の企業においても、禁止しているところもあれば解禁しているところもあるようです。
しかし最近は、法律改正により、公務員の副業については段階的に緩和されてきているようです。
ここでは、緩和されてきていることの前段階として、副業禁止の根拠となっている法令を確認してみたいと思います。
地方公務員法38条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第1項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第22条の2第1項第2号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
法令をよく見ると、「任命権者の許可」がなければ「従事してはならない」と書いてありますね。
裏を返せば、許可があれば副業は可能、とも読めますね。
つまり一般論として、公務員は「副業禁止」ではなく、「許可制」ということが正しい解釈のようです。
また、教育公務員としては、別の法令も存在しています。
教育公務員特例法17条 教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第37条第1項に規定する県費負担教職員については、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会。第23条第2項及び第24条第2項において同じ。)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。
書きぶりは全く違いますが、こちらの法令では、「任命権者において認める場合には」「従事することができる」と書かれています。
つまり教員の場合は、地方公務員法とは違い、認める前提があるようですね。
ただし、「教育に関する」他の職であり、「本務の遂行に支障がない」、ことが条件となっています。
まとめると次のことが言えます。
教育公務員は、本務の遂行に支障がない、と任命権者が認める場合、
- 教育に関する他の職を兼ねること
- 教育に関する他の事業、事務に従事すること
は可能ということになります。
給与についても、受け取っても受け取らなくてもよいとされています。

教育公務員は、教育に関する内容であれば、許可のもとで副業が可能、ということですね!
兼職・兼業の制限について、これも「身分上の義務」ということです。
また、地方公務員と教育公務員、兼職兼業の取り扱いが違っていましたね。
ここはしっかりと整理して覚えておきましょう。
これだけは覚えておこう
さて、2回シリーズで「身分上の義務」について考えました。
前回分も含めてまとめてみましょう。地方公務員の服務として、
- 職の信用を傷つけてはならない → → → → → →「信用失墜行為の禁止」
- 知り得た秘密を漏らしてはいけない → → → →「秘密を守る義務」
- 政治的中立を守らなくてはならない → → → → 「政治的行為の制限」
- 勤務条件について争ってはならない → → → → 「争議行為等の禁止」
- 他の職に従事してはならない → → → → → → →「兼職・兼業の制限」
「身分上の義務」に対して覚えておくべきキーワードは「職務上の義務」です。
ここまでをまとめると、
教育公務員の服務とは「職務上の義務」と「身分上の義務」
となりますね。
しっかりと、この関係と、それぞれの項目を覚えておきましょう。

教員の服務に関する内容は超重要・超頻出項目です。しっかりと、確実に覚えておきましょう。
今回のまとめ
(1) 教育公務員の服務=( )の義務+( )の義務
(2)地方公務員法37条
職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して( )、( )その他の( )をし、又は地方公共団体の機関の( )を低下させる( )をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
(3)教育公務員特例法17条
教育公務員は、( )に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが( )に支障がないと( )(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第37条第1項に規定する県費負担教職員については、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会。第23条第2項及び第24条第2項において同じ。)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に( )ができる。
今回はこれで以上です。教職員の服務、特に「身分上の義務」についてまとめてみました。
ではまた次回、お会いしましょう。
